観光列車「海里」で巡る新潟・庄内モデルコース ~絶景と美食を満喫する週末旅~

2019年10月にデビューした日本海に臨む観光列車「海里」に乗り込み、新潟・庄内の見どころを巡る2日間のモデルコースです。絶景、グルメ、温泉、歴史、そして癒やしの時間まで、充実の内容をぎゅっと凝縮。今回は、1日目に山形県の鶴岡市を、2日目に新潟県の村上市を訪れました。心も体も満たされる週末旅行へ、さあ、出かけましょう!

観光列車「海里」とは?

「海里」のイメージ
日本海の夕日をイメージしたサンセットオレンジから、新雪をイメージしたホワイトへのグラデーションが美しい車体

「海里」は新潟駅と山形県の酒田駅を結ぶ観光列車で、「新潟・庄内の食と景観を楽しむ列車」として運行されています。4両編成のディーゼルハイブリッド車両を新造した、おしゃれな外観が印象的です。最大の魅力は、車窓から見える日本海の絶景! 特に、新潟県と山形県の県境に位置する、笹川流れと呼ばれる奇岩が立ち並ぶ景色は圧巻です。また、新潟の老舗料亭の日本料理や山形の有名レストランの食事など、新潟・庄内の美食を車内で楽しむことができます。

全車指定席で、乗車方法は2パターンあります。4号車は食事付旅行商品専用のダイニング車両で「のってたのしい列車予約サイト」から、1・2号車の指定席は「えきねっと」または駅の指定席券売機、みどりの窓口などで購入可能。週末を中心に運行され、老若男女に人気の列車です。

【1日目】見て食べて癒やされて 「海里」から始まる新潟・庄内の魅力を満喫

東京駅から新潟駅までは新幹線で約2時間。新潟に着いたら在来線ホームへ移動し、「海里」に乗り換えて出発です! まずは鶴岡駅に向かいます。「海里」の車中も、鶴岡に着いてからもお楽しみが目白押し。到着したら駅前でレンタカーを借りて、市内各地へと足を延ばします。

1日目① 鶴岡までの車中もワクワクが止まらない! 「海里」でしか味わえない特製弁当と絶景を堪能

新潟県村上市にある海岸線の景勝地「笹川流れ」
事前予約制「海里特製 加島屋御膳(2,920円)」と「雪国緑茶(220円/冨士美園)」

今回は指定席のきっぷを購入して乗車しました。1号車は2人掛けリクライニングシート、2号車は4人掛けコンパートメントシートが配置されていて、ゆったりとした空間になっています。大きな車窓からは田園風景や日本海の絶景を一望でき、まるで景色に溶け込むような感覚に。車掌による沿線案内のアナウンスが流れ、見どころの笹川流れでは低速運転でゆっくりと景観を楽しめます。

車内では「海里特製弁当」も堪能。予約サイト「うけとりっぷ」で乗車日の5日前までに注文し、3号車の売店で受け取れます。170年続く老舗「加島屋」のお弁当には、名物のキングサーモン味噌漬、いくら醤油漬、海老しんじょうなど新潟の味覚が詰まっています。桑川駅では長めに停車時間が設けられているので、下車して隣接の道の駅へ。停車時間だけのスイーツ「海里限定Specialソフト」を購入し、日本海を眺めながら味わいました。あっという間に鶴岡駅に到着です。

1日目② 世界最大級! 優美なクラゲに癒やされる「鶴岡市立加茂水族館」

加茂水族館の外観
クラゲ以外に「ひれあし広場」のアシカやアザラシも人気
フォトジェニックな写真が撮れる「クラゲドリームシアター」

最初に訪れたのは、鶴岡駅から車で約30分の「鶴岡市立加茂水族館」。クラゲ展示種類数で世界最大級を誇り、国内外から多くの観光客が訪れる人気のスポットです。なんといっても見どころは、直径5メートルの円形型水槽「クラゲドリームシアター」。数万匹ものミズクラゲが浮遊するさまは圧巻で、まるで海の中の星空を見ているような幻想的な世界が広がっています。ライトアップされたクラゲたちが織りなす美しい光景に、思わず時間を忘れてうっとり……。さらに特別な体験をしたい方には、水槽の裏側を案内してもらえる「バックヤードツアー(有料)」もおすすめです。

2025年11月~2026年3月末までリニューアル改修のため臨時休館になりますが、クラゲの展示種類数は現在の約80種から100種を目指しているとのこと。リニューアル後も楽しみです。

鶴岡市立加茂水族館

住所:
山形県鶴岡市今泉字大久保657-1

TEL:
0235-33-3036

営業時間:
9:00~17:00(最終入館16:00)

定休日: なし
※2025年11月~2026年3月末までリニューアル改修のため臨時休館

交通アクセス:
鶴岡駅から車で約30分、鶴岡駅から庄内交通路線バス「湯野浜温泉行き(加茂経由)」で約40分「加茂水族館」下車

料金:
一般(高校生以上)1,500円、小中学生 500円、未就学児 無料

URL:
https://kamo-kurage.jp/

1日目③ 厄除け・開運「荘内神社」で、季節を感じながら参拝

荘内神社の本殿
御祭神として庄内藩の歴代藩主を祀っている本殿
秋の御朱印のイメージ
取材時は夏でしたが、特別に秋(10月)の御朱印を見せていただきました

「加茂水族館」から再び市内中心部へ。「荘内神社」は鶴ヶ岡城の跡地であり、桜の名所の鶴岡公園内にあります。1877(明治10)年、旧藩主を慕う庄内一円の人々によって建てられ、現在に至るまで鶴岡市民の心のよりどころとして親しまれている神社です。季節ごとに美しい花々が浮かべられる花手水は、見ているだけで心が癒やされます。御朱印も季節ごとに変わるオリジナルのデザインで、毎月訪れる人も多いそうです。

一年を通じて美しい花々が咲き揃う鶴岡公園の中にあるので、季節の花々と一緒にお参りを楽しめるのも魅力。春は桜、夏は緑陰、秋は紅葉、冬は雪景色と四季折々の美しい景色が出迎えてくれます。境内にある神社カフェ「かたばみ」で、参拝後にほっと一息つくのもおすすめです。

荘内神社

住所:
山形県鶴岡市馬場町4-1

TEL:
0235-22-8100

参拝時間:
24時間参拝可能

授与所受付時間:
8:30~17:00

交通アクセス:
鶴岡駅からバスで約8分「鶴岡市役所」下車

URL:
https://jinjahan.com/

1日目④ 憧れの「スイデンテラス」に宿泊、特別な空間で心も体もリフレッシュ

SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE(ショウナイホテル スイデンテラス)の外観
田植え前は水が張られ、美しい水鏡が印象的。一日の中でも、季節によっても表情を変える
ディナーで提供される料理のイメージ
食のテーマは「Farm to Table 山形庄内の“農”とつながるレストラン」。庄内の17の酒蔵の銘酒や県内15ワイナリーのワインなど、アルコールメニューも多く揃う

「荘内神社」から車で10分足らず、宿泊は“田んぼに浮かぶ”ホテルとして話題の「スイデンテラス」へ。世界的建築家・坂 茂氏がデザインした美しくシンプルな空間が特徴で、館内に一歩足を踏み入れると、木の香りに満ちた心地よい空間が広がります。源泉かけ流しの天然温泉はわずかにとろみを帯び、温泉に浸かりながら田園風景と夜空を一望。館内には2カ所にライブラリーが設けられ、合計2,000冊の本が並びます。日常の疲れを忘れて心から安らげる、特別なひとときです。

また、ディナーでは、山形庄内の食を知り尽くしたシェフが、海、山、川、田畑、それぞれの産地から厳選した食材に腕を振るいます。庄内の豊かな食文化をお酒とともに心ゆくまで堪能し、1日目を締めくくりました。

SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE(ショウナイホテル スイデンテラス)

住所:
山形県鶴岡市北京田下鳥ノ巣23-1

TEL:
0235-25-7424

交通アクセス:
鶴岡駅から車で約10分

URL:
https://suiden-terrasse.com/

【2日目】途中下車した新潟・村上で鮭文化を満喫

鶴岡駅から特急「いなほ」に乗って新潟方面へ。約1時間で到着し、途中下車したのは新潟県の村上駅。千年続く鮭文化と美しい城下町で知られる、歴史と文化が息づくまちです。村上市内は徒歩、またはタクシーで巡るのがおすすめです。

2日目① 日本初! 鮭の博物館「イヨボヤ会館」で学ぶ、奥深き鮭の世界

「イヨボヤ」とは村上の方言で「鮭」のこと。大きな鮭のモニュメントとサーモンピンクの外観が目印
10月末頃~12月中旬頃までが、遡上した鮭の姿を見られるチャンス

村上駅から徒歩で約20分、市内を流れる三面川の畔にある「イヨボヤ会館」は、とても珍しい鮭の博物館として県内外から親しまれています。地下には、三面川の分流「種川」の水中の様子を観察できる、全長50メートル、幅8メートルの大観察室があり、自然の川に生息する川魚などの姿を見ることができます。毎年、秋には親鮭が遡上するのでタイミングがよければ、貴重な産卵シーンに遭遇できることも!

そのほか、三面川にすむ淡水魚など約50種類を展示する水槽も充実。鮭の仲間や川に暮らす生き物たちの姿を間近で見ることができます。また、映像や展示を通して鮭の一生や村上の歴史を楽しく学べるのも魅力です。

イヨボヤ会館

住所:
新潟県村上市塩町13-34

TEL:
0254-52-7117

営業時間:
9:00~16:30

定休日:
年末年始(12月28日~1月4日)

交通アクセス:
村上駅から徒歩約20分、車で約5分

料金:
大人600円、小中高生300円

URL:
https://www.iyoboya.jp/

2日目② 「和食処 悠流里」で村上名物「はらこ丼」を実食!

一番人気の「はらこ丼(2,200円)」は小鉢、味噌汁、香の物付き
店内は、テーブル、掘りごたつ、座敷、座敷テーブルと多彩な席が揃う

鮭文化を学んだ後は、「イヨボヤ会館」から徒歩約3分の場所にある「悠流里(ゆるり)」でランチタイム。もちろん、村上の鮭文化を感じられる名物・はらこ丼をいただきます。丼の主役は、鮭の旨みをたっぷり含んだいくら(はらこ)です。まるで光り輝く宝石のように艶やかで、ひと粒ひと粒が口の中で弾けます。ご飯には、地元で育まれた岩船産コシヒカリを使用。ふっくら炊き上げられた白米の上にいくらが贅沢にぎっしり敷き詰められ、見た目も華やかな一品です。ひと口ごとに濃厚なうま味が溢れ、思わず笑顔に!

そのほか、鮭の切り身がセットになった「鮭親子丼」や村上牛も味わえる「村上牛炙り丼・鮭親子丼セット」など豊富なメニューにも注目です。

和食処 悠流里

住所:
新潟県村上市塩町4-5

TEL:
0254-53-6288(席予約可)

営業時間:
11:00~14:30 L.O(金・土曜のみ夜も営業/17:30~20:00 L.O)

定休日:
水曜(臨時休業あり)

交通アクセス:
村上駅から徒歩約15分、車で約5分

2日目③ 城下町の風情を感じる「安善小路」をまち歩き

「安善小路」の一角に佇む、浪漫亭(国登録有形文化財)
1712(正徳2)年に建立された安善寺の楼門 ※創建年代は諸説あり

「悠流里」から徒歩約8分、「安善小路」は城下町の風情を色濃く残す黒塀が続く小路で、地元の人からは「黒塀通り」とも呼ばれています。かつて安善寺へ通じる道として親しまれ、芭蕉も歩いたといわれる歴史ある通りで、浄念寺や安善寺、文化財の古民家などが並び、情緒あふれる景観が広がります。

2002年には市民の手で「黒塀一枚千円運動」が始まり、17年をかけ460メートルにわたる黒塀が完成しました。秋には「むらかみ 宵の竹灯籠まつり」の会場となり、約2万本の竹灯籠の灯りが揺らめく幻想的な光景に包まれます。まさに、まち歩きにぴったりのスポットです。

安善小路(黒塀通り)

住所:
新潟県村上市小町

交通アクセス:
村上駅より徒歩約20分、車で約5分

駐車場:なし
※「むらかみ 宵の竹灯籠まつり」2025年は10月11日(土)、12日(日)に開催

2日目④ 「茶寮カネエイ」で村上茶とともに、ほっとひと息ティータイム

「お茶とお菓子セット(990円~)」。お茶は約10種の村上茶から、お菓子は4種類から1種を選べる
「冨士美園」の入口から奥へ、町屋造りの土間を抜けると「カネエイ」の喫茶スペースがある

村上市の特産品として鮭と並ぶのが村上茶です。北限の茶処として150年以上の歴史を誇る老舗「冨士美園」の村上茶は、観光列車「海里」の車内ドリンクにも選ばれています。

「安善小路」から徒歩約8分、昔ながらの町並みを抜けてたどり着いたのが、同園から生まれた村上茶専門カフェ「茶寮カネエイ」です。ここで味わえるのは、上品な甘みと豊かな香りの村上茶各種。二煎目まではスタッフが丁寧に淹れ、三煎目からは自分で急須から淹れる、茶淹れ体験ができるスタイルです。お茶とお菓子のセットが人気で、地元の銘菓とともに楽しめます。大正時代の製茶工場を改装した店内は趣深く、地元の伝統工芸士や作家による茶器を使用するなど、細部へのこだわりが光ります。旅の締めくくりにピッタリな、特別な時間を過ごせる場所です。

茶寮カネエイ

住所:
新潟県村上市長井町4-19

TEL:
0254-52-2716

営業時間:
11:00~17:00(16:30 L.O)

定休日:
木曜・金曜・祝日

交通アクセス:
村上駅から徒歩約18分、車で約5分

URL:
https://www.fujimien.jp/

絶景と美食に包まれる「海里」の旅

「海里」は景観とグルメの両方を満たしてくれる観光列車です。沿線の魅力を感じながらゆったりとした時間を過ごす列車旅は、何より贅沢な体験でした。加茂水族館のクラゲに癒やされ、荘内神社で心を清め、スイデンテラスでは至福のひとときを。村上では千年続く鮭文化に触れ、はらこ丼や村上茶で地域の味を堪能し、すべてが忘れがたい思い出となりました。季節ごとに異なる日本海の表情も楽しみに、ぜひ「海里」に乗って、新潟・庄内の魅力を体験しに出かけてみてください。

取材・文:新井匡美
写真協力:交通新聞クリエイト、荘内神社、スイデンテラス、イヨボヤ会館、和食処 悠流里

※掲載されているデータは2025年8月現在のものです。
※表記されている価格は税込みです。

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