【えきねっとマガジン×トレたび】観光列車「ひなび(陽旅)」で行く~田園をゆったり釜石線~海を目指し歴史に触れ遠野で満腹編

2024年9月18日に「えきねっとマガジン」がリニューアル! その記念企画として「トレたび」とのコラボ記事が到着しました。旬の観光列車や豪華列車、おトクなきっぷを利用した鉄道旅など、懐かしくて新しい旅行スタイルを提案する同サイトが今回訪れたのは、10月より秋の観光キャンペーン「秋は短し旅せよ岩手」も控える岩手県。観光列車「ひなび(陽旅)」に乗って遠野を満喫した1泊2日の道程をお伝えします。「トレたび」のほうには、同じ「ひなび(陽旅)」でも宮古へと向かったレポートも掲載。「ひなび(陽旅)」で行くモデルコース~乗車もレアな体験の山田線~秘境の先に都の海味編」と合わせてどうぞ。

2023年12月にデビューした観光列車「ひなび(陽旅)」に乗って、北東北のハブ駅・盛岡を出発、向かうは三陸・釜石です。快適な列車の車窓から釜石線沿線ののどかな田園風景を楽しみつつ、釜石や遠野の「ならでは」な体験をする旅をしてみませんか? 釜石では「鉄の歴史と海の恵み」を。遠野では「日本のふるさと」の風景をまるごといただきます。思い出いっぱいの列車旅になるはず!

観光列車「ひなび(陽旅)」とは?

宮守駅~遠野駅間の田園風景のなかを走る列車「ひなび(陽旅)」

「ひなび(陽旅)」は全席指定2両編成の観光列車です。1号車がグリーン車指定席、2号車が普通車指定席で、各車両の運転台の後部には展望スペースがあります。腰掛けやソファーが設置され、大きな窓から景観を楽しめます。沿線の観光情報のアナウンスや、特別な仕様の装飾などが、旅の気分を盛り上げてくれます。

ひなびの運転日や時刻などは「のってたのしい列車ポータルサイト」へ。きっぷの購入は、「えきねっと」で。グリーン席(BOX)もしくは指定席を選び、あわせて乗車券も申し込んだら、希望の座席を選択します。盛岡駅~釜石駅間は交通系ICカードが使えない区間のため、紙のきっぷの受け取りが必要です。クレジットカード決済後の予約番号かQRコードを持参し、乗車前に駅で発券しましょう。

長距離移動だからこそ快適に! 車窓とランチを楽しみ三陸沿岸へ

東京から盛岡までは新幹線で2時間10分。盛岡に着いたら東北本線(釜石線直通)のホームへ。「ひなび(陽旅)」に乗り換えます。この旅では憧れのグリーン車一人席を確保できました。また事前予約したランチ商品を列車内で受け取る、という楽しみもプラスで釜石へ向け出発します!

1日目① ひなび列車内でランチタイムに!「うけとりっぷ」サービスを利用

贅沢な気持ちになれるグリーン車の一人掛けシート
遠野駅を発車してから受け取る「おむすびBOX(1200円/とおの結屋)」

グリーン車の一人掛けシートは半個室で、車窓の景色を独り占めできます。テーブルには岩手の伝統工芸品・南部鉄器の台座と成沢和紙のうちわが添えられていて、地域の魅力を伝えています(9月28日(土)までの期間限定)。花巻駅から先は釜石線のレールを走り、1時間弱で遠野駅に到着。長めに取られている停車時間は自由に過ごせます。

この後いよいよ「うけとりっぷ」の商品を受け取ります。スマートフォンから沿線のグルメなどを事前予約・決済し、駅や列車内で受け取れるサービスです。まずは会員登録(無料)をして、利用する列車を選び、商品を選んで決済します。乗車日にチケット画面を見せて、「ここでしか味わえない」商品の受け取り完了です。「ひなび」では、1号車の売店コーナーでアテンダントが対応してくれます。

1日目② 「鉄の歴史館」の鋳造体験でキーホルダーを作る

小高い丘の上にある「釜石市立 鉄の歴史館」からは釜石湾を一望できます
鋳造体験でさまざまな道具を使用。鉄のまち・釜石にぴったりの土産が完成!

「釜石市立 鉄の歴史館」は、釜石線の終着駅、釜石が「鉄のまち」だとわかる見学施設。ここならではの珍しい体験として、キーホルダーの鋳造に挑戦できます。型選びから始まり、木型に鋳物砂を詰め、融かした金属(錫と鉛)を流し込む工程など、夏休みの自由研究のような気持ちで取り組めます。ていねいな指導のもと約1時間でキーホルダーが仕上がり、記念のお土産になるだけでなく、高炉でできた鉄がどのような過程で製品になっていくのかをイメージできる体験となります。

また、釜石市内にある世界遺産「明治日本の産業革命遺産」の構成資産の1つ「橋野鉄鉱山」は、現存する日本最古の高炉跡。「鉄の歴史館」から車で30分ほどの山奥にあり、訪ねてみたい場所です。

鉄の歴史館

住所:
岩手県釜石市大平町3-12-7

問い合わせ先:
TEL 0193-24-2211

開館時間:
9:00~17:00(入館は16:00まで)

定休日:
火曜、12月29日~1月3日

交通アクセス:
釜石駅前から岩手県交通バス平田NT線約11分の釜石大観音入口下車、徒歩5分

料金:
一般500円(鋳造体験は予約制、別途700円)

URL:
https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2016101700037/

1日目③ 「浜べの料理宿 宝来館」に泊まり、豊かな三陸の海を体感

地元の海の味を知り尽くした板前が腕を振るう料理(一例)
露天風呂からの眺めは松林と大槌湾の向こうに太平洋も

「浜べの料理宿 宝来館」は、釜石駅から数㎞北東の大槌湾に面した料理宿。根浜海岸を一望する食事処で、地元の海を知り尽くした板前や浜のお母さんたちによる、心づくしの料理をいただけます。一例として、種類も豊富なカレイの煮付けは三陸で定番の一品。季節ごとの恵みを添えた海鮮料理をたっぷり味わえます。

海側の客室からは松林越しに大槌湾の景色を眺め、ゆっくりと滞在を楽しむことができます。露天風呂を備えた男女別の大浴場から朝日(4月下旬~8月下旬)や月の道(11月中旬~2月中旬)を拝めれば心も洗われそう。浜辺を散歩して豊かな海を感じつつ、東日本大震災の語り部によるお話も必聴です。

浜べの料理宿 宝来館

住所:
岩手県釜石市鵜住居町第20地割93-18

問い合わせ先:
TEL 0193-28-2526

交通アクセス:
釜石駅から車で約15分、三陸鉄道鵜住居駅から徒歩約27分(宿泊者送迎バスあり。予約時などに要確認)

URL:
https://houraikan.jp/

途中下車した遠野のまちを散策してグルメ発見!

前日の長距離移動の疲れは宿泊で癒して、元気に旅の続きを。釜石線普通車に乗って、途中下車したのは遠野。駅周辺にも魅力的な観光施設などがあります。地域に根差した文化に触れ、遠野名物を味わいます。

2日目① 「遠野まちなか・ドキ・土器館」でユニークな縄文文化に出会う

知る人ぞ知る、遠野の縄文文化を発信する拠点
高さ4センチと小柄な「たそがれ土偶」 所蔵/遠野市教育委員会

北東北に広く点在する縄文遺跡は、遠野にも。約6000年前の集落跡である国指定史跡の「綾織新田遺跡」など、多くの縄文遺跡が見つかっています。遠野駅から徒歩12~13分ほど進み、城下町のカギ型に整備された街路を抜けると、知る人ぞ知る縄文ワールドが! 遠野で出土した土器・土偶を無料で見学できるのが「遠野まちなか・ドキ・土器館」です。

なかでも「たそがれ土偶」との愛称があるユーモラスな土偶は必見! 縄文時代の人々の生活や精神文化を垣間見ることができます。

※2024年9月29日まで、所蔵する全ての土偶、総点数50点を一挙公開。

遠野まちなか・ドキ・土器館

住所:
岩手県遠野市新町5-3

問い合わせ先:
TEL 0198-62-7870

時間:
10:00~16:00

定休日:
月曜(祝日・振休の場合、翌日休館)

交通アクセス:
遠野駅から徒歩約10分

料金:
入館無料

URL:
https://www.city.tono.iwate.jp/index.cfm/48,15765,303,html

2日目② 城下の町並み「とおの物語の館」で昔の「話っこ」を聞く

「昔話蔵」では遠野に伝わる昔話の世界を、映像や切り絵などで体感
「遠野昔話語り部の会」メンバーによる公演は約20分間(季節により開催日時が異なります)

遠野は昔から内陸部と沿岸部を結ぶ拠点として多くの物資や人々が集まったこともあり、「とおの物語の館」と一帯には観光スポットが集まっています。造り酒屋の蔵を改築した「昔話蔵」では、遠野地方に古くから伝わる昔話の世界を体感。「遠野座」では、地元の語り部が交代で「座敷ワラシ」「河童」などの民話を1日3回(12月~3月は土日祝のみ1日1回)実演。地域の言葉の「話っこ」に心が温まり、特徴ある語尾「~ずもな」をマネしたくなります。お婆さんのもとに通って夢中で話を聞き取った佐々木喜善の気持ちや、柳田國男の『遠野物語』が世に出た道のりを想像して楽しめます。民俗学調査の拠点となった「旧高善旅館(国指定登録有形文化財)」の見学も。

とおの物語の館

住所:
岩手県遠野市中央通り2-11

問い合わせ先:
TEL 0198-62-7887

時間:
9:00~17:00(入館受付は16:30まで)

定休日:
第1火曜(11月~3月は毎週火曜 ※4月~5月は無休)、年末年始

交通アクセス:
遠野駅から徒歩約5分

入館料:
一般510円 ※遠野座(昔話)および、遠野城下町資料館(予約制)入館料を含む

URL:
https://tonokanko04.wixsite.com/my-site

2日目③ 「まるまん じんぎす館」で実食、遠野名物に旨いものあり!

鉄製のジンギスカン鍋にまず野菜を入れて焼き、順次、肉も並べて焼きます
先代から受け継いだ人気のヒミツをアットホームな店内で味わえます

遠野では普段から人が集まればジンギスカンを食べる文化があるとか。BBQのように楽しむ「バケツジンギスカン」が地元流ですが、人気の専門店で味わえるのが旅人には手軽です。

駅から近い「まるまん じんぎす館」はアットホームな雰囲気で、昼でも夜でも名物のジンギスカンを楽しめます。1人前の定食があるほか、3人前の「ジンギス館セット(3900円)」は、専用の鉄鍋で野菜を焼きながら、味付けの異なる肩ロース肉を食べ比べることができます。焼き立ては格別に柔らかく、ラム肉特有の臭みのない旨さは先代から受け継いだ秘伝の処理方法によるもの。別注文の白米とともに、どんどん食べ進みます。遠野市民に親しまれるヒミツがわかるようです。

まるまん じんぎす館

住所:
岩手県遠野市中央通り1-8

問い合わせ先:
TEL 0198-60-1185

時間:
12: 00~14:00・18:00~21:30

定休日:
火曜

交通アクセス:
遠野駅から徒歩5分

2日目④ 「遠野醸造TAPROOM」で、ホップの香り・苦みを飲み比べ!

選べる3種飲み比べセット(1350円・各180ml)。シェフのおまかせ前菜にも地場の食材がたっぷり!
店の奥に醸造施設を備えたタップルーム。缶ビールやグラウラーでのテイクアウトも可能

ほろ酔いでも遠野駅まで徒歩3分、地ビールを飲まずには帰れない旅人は「遠野醸造」へ。遠野産ホップなどを使用した常時6種類の生ビールとともに、地域の食材を活かした料理も味わえるコミュニティブルワリーです。3種のホップの香りが際立ち、苦味は控えめの「ペールエール」が定番のほか、地元の珈琲店のモカ豆を使った「コーヒースタウト」もここだけの味。リンゴの香り豊かな「遠野サイダー(酒)」やホップの炭酸飲料なども季節の料理によく合います。ビールと好相性の夏野菜「遠野パドロン」は、「遠野風の丘ホップフランク」のなかで、ピリッと肉の旨さを引き立てます。1本(650円)につき3.3円がホップ生産の維持に使われるので、必食です!

遠野醸造TAPROOM

住所:
岩手県遠野市中央通り10-15

問い合わせ先:
TEL 0198-66-3990

時間:
土日祝12:00~21:30L.O(日曜~20:30L.O)、平日17:00~21:30L.O

定休日:
火曜

交通アクセス:
釜石線遠野駅から徒歩約3分

URL:
https://tonobrewing.com/taproom/

2日目⑤ 駅前の「旅の蔵 遠野」で観光情報をゲット&お土産探し

「旅の蔵 遠野」で観光マップを手に入れて、街めぐりに出発
醸造酒「果実物語」は、左から、いちごとラズベリー・ゆず・りんご・ぶどうの4種各180ml

鉄道利用の前後にも立ち寄りやすい駅前の「旅の蔵 遠野」は、遠野市観光協会が運営し、観光情報を収集できるほか、物産品の売店や休憩コーナーを備えた便利な施設。シーズン中はレンタサイクル(4時間720円~)や、指定日に「遠野めぐり号」バスの運行も。

旅の土産に買い求めたのは、新しいタイプの醸造酒「果実物語」。遠野産の米の酒「どぶろく」と、リンゴ・ブドウなど県内産フルーツを組み合わせたカクテルです。岩手の食材が混ざり合った斬新で濃厚な味わいは、グルメな旅の締めくくりのデザートにもぴったり!

※製造販売する「宮守川上流生産組合」によると、今年収穫する果実と米を使った新酒は、2025年2月頃から発売予定とのこと。

旅の蔵 遠野

住所:
岩手県遠野市新穀町5-8

問い合わせ先:
TEL 0198-62-1333

時間:
8:30~17:30

定休日:
年末年始

交通アクセス:
遠野駅から徒歩すぐ

URL:
https://tonojikan.jp/toiawase/tabinokura.php

「ひなび(陽旅)」に乗って、特別な岩手の旅を!

「銀河ドリームライン」が愛称の釜石線は、純粋に乗りたいという鉄道好きの夢も、土地の味覚に目がないグルメ派の夢も叶えてくれます。「ひなび(陽旅)」車内のアナウンスで路線の歴史的背景や魅力を感じ、ゆったりした心地で移動する列車旅こそが、贅沢な時間に思えました。もちろん降り立った土地ならでは体験と味は、忘れがたいものに。季節ごとの風景も楽しみに、釜石・遠野への列車旅に出かけましょう。

取材・文:
新山さゆり

撮影:
阿部和史

写真協力:
浜べの料理宿 宝来館、遠野市文化課、遠野醸造、宮守川上流生産組合

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